対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
定例会に出ると、おじさんたちが次々に声を掛けられ、あっという間に囲まれる恵巳。顔見知りの人もいれば、久しぶりに再会する人もいた。どうやら拡樹は来ていないらしく、ひとまず心を撫で下ろす。

「久しぶりだな。まーた綺麗になったんじゃないか?」

「お父さん、ぎっくり腰なんだって?また無茶したんだろうな。もう歳なんだから慎重になんなきゃいけないのにな。こんど見舞いに行くよ」

「それにしても、交流館が繁盛して良かったな。うちの娘もこの前お邪魔したんだが、面白かったって言ってたよ」

以前父と来た時に感じた定例会の居心地の良い雰囲気を思い出しつつ、懐かしみながら次第にその雰囲気に染まっていく。

そして、ふんわりした流れで定例会が始まる。特に大きな議題もなく、お菓子を食べながら会議はぬるりと進んでいく。

「あの、平安和歌交流館の小関さんですよね?」

隣に座った若い女性から声を掛けられた。

「はい、そうです。えっと…」

「私、歴史博物館でスタッフをしてます」

名刺を渡され、挨拶を交わす。

拡樹の姿が見えないことに安堵していたが、こんなに近くに関係者がいたことに急激にのどが詰まる思いになる。
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