対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「刀…?開催は来年って、まだまだ先じゃん。なのに予約受け付けてるんだ」

来年の予定がもう既に企画されていることに、大手ならではの資金力を痛感した。恵巳も、思い付きで企画を開催することがあったが、どれも成功とは言い難い。そんな過去を思い出しては、目の前のポスターに実力の違いを見せつけられているようで惨めな思いに支配された。

「やっぱ、無理なのかな…」

そこに、職員が2人通りかかった。やましいことをしているわけではないが、自分の中で潜入と銘打ってしまっているせいで、つい柱の影に身を隠した。そこからこっそり聞き耳を立てる。博物館の制服を着ているあたりを見ると、受付をしている女性たちのようだった。

「ねぇ、知ってる?この刀展示の企画って、館長直々の提案らしいわよ」

「へえ、館長って刀好きなんですか?意外とかわいいところありますね。
この企画、もうすでに前売り結構な数出てるみたいですよ。すごいですよね。そういえば、そんな館長に結婚の噂があるの知ってます?」

「そうなの!?知らないわよ!館長が結婚なんて、うちの従業員が知ったら黙ってないんじゃないの?館長の相手になるくらいの女性なら、どこかのお金持ちなんだろうけど、それでも、私たちの最後の砦を奪った罪は重いわよ」

彼女たちの会話を細かくメモしていく。最後の砦、とメモを取って、どういうことだ、と首をかしげた。
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