対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「とにかく、親父さんが許しても、俺は許さねーからな」

「なんでやまやんがそこまで本気になってんのよ」

「本気にもなるだろ…」

時間が合えば、こうして居酒屋に来ては他愛もない話をしている2人。まじめな相談も恋愛話も、何でも話せる関係で、何でも言い合える間柄。そんな関係だからこそ、蓮からの言葉は刺さっていた。

若干空気が重くなる。そこに、中年の男性が顔を出した。この居酒屋の店長だ。

「なんだよ、今日はえらく難しい顔して飲んでんじゃねーかよ。痴話げんかでもしたのか?ほれ、一杯サービスだ」

店長はジョッキを置くと、親し気に2人に絡みだした。

「お前ら本当に仲良いよなー。こんなしょっちゅう来てっと、一生結婚できねーぞ。どうせ付き合ってる相手もいないんだろ?

あー、いいのか。ここ2人でくっつくんだったっけか?なんだかんだ、近場で見つけたほうがしっくりくるってもんだよな」
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