対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「やまやん、実は、もうその雑誌には断られてる」
「え、まじで?」
「銀行行って金策に動き回ってるときに、苦肉の策として雑誌に連絡したみたい。話す間もなく断られたって言ってたけど」
「ぱっとしない交流館は難しいかー」
「ぱっとしないとは何よ」
自分で言うのはいいが、人に言われるのは気に食わない。
雑誌は無理だったが、以前ローカル番組で1分間宣伝させてもらったことはあった。
その効果は言うまでもなく、このがらりとした交流館が全てを物語っている。
それからすぐに仕事に戻った蓮。置いて帰った雑誌を改めて開き、拡樹の載っているページを読み込む。
この若さでの経営は大変ではないかという質問に対して、「父の名前があるからこそ、この年齢で経営者の椅子に座っていられるんです。父の名前はプレッシャーにもなりますけど、いつかは超えたい存在でもありますね。
博物館では多くの資料を扱っていますので、初めて知ることもたくさんあるんです。未熟なところもありますが、その勉強も、楽しみながらやれてるのは、良いことかなと思います」
気が付けば、すべてのインタビュー記事を読み終えていた。
「素直に答えてるって感じだな」
どこを切り取っても嫌味が一切なく、親のコネなど陰で言っている人を黙らせる記事になっていそうだった。
そしてきっと、宮崎拡樹という個人に対して興味を持つ女性も増えるであろう取り上げられ方だった。