対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
古書店での手伝いを終えてとぼとぼと交流館に着いた恵巳は、奥の部屋にある椅子に座った。
いつものように、目を閉じて和歌の息遣いを感じる。初恋や純愛を思わせる歌も多くあるが、到底そんな歌を眺める気にはならなかった。
どうにもならない気持ちで恵巳が目をつけたのは、愛する男を思って詠まれた歌。
わたしのことを愛すると誓ったあなたは、短い夏の夜が見せた夢だったのでしょうか。
私が何も知らないと思って、私にだけくれたその言葉を、他の女にも囁いているのでしょうね。
またここにくることがあるならば、何も知らないふりをしてあなたに答えるくらいはして差し上げます。
最初にこの歌を詠んだ高校生の恵巳は、男を取られて泣きながらも、突き放すことができない弱い女性の歌だと思っていた。しかし、年齢を重ねてからまた詠むと、別の感情が沸いてきていた。
全て知っているのに知らないふりをして、浮気をする男にも、浮気相手にさえもその度量の大きさを見せる。間違いなく女の価値はあがる。
そうして強かに、最終的にはこの男をものにしたのではないだろうか。とても芯の強い女性の歌なのではないかと。
いつものように、目を閉じて和歌の息遣いを感じる。初恋や純愛を思わせる歌も多くあるが、到底そんな歌を眺める気にはならなかった。
どうにもならない気持ちで恵巳が目をつけたのは、愛する男を思って詠まれた歌。
わたしのことを愛すると誓ったあなたは、短い夏の夜が見せた夢だったのでしょうか。
私が何も知らないと思って、私にだけくれたその言葉を、他の女にも囁いているのでしょうね。
またここにくることがあるならば、何も知らないふりをしてあなたに答えるくらいはして差し上げます。
最初にこの歌を詠んだ高校生の恵巳は、男を取られて泣きながらも、突き放すことができない弱い女性の歌だと思っていた。しかし、年齢を重ねてからまた詠むと、別の感情が沸いてきていた。
全て知っているのに知らないふりをして、浮気をする男にも、浮気相手にさえもその度量の大きさを見せる。間違いなく女の価値はあがる。
そうして強かに、最終的にはこの男をものにしたのではないだろうか。とても芯の強い女性の歌なのではないかと。