対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「これが大人な恋ってことなのかな…」
温泉旅行から戻ってきて1週間ほどが経っていた。何も知らない拡樹からはいつも通り電話をかけて来たり、ドライブの誘いがあったりしていた。
しかし、どの誘いにも何かと理由をつけて断っていた。最初は仕事を理由にしたり、体調不良を使ったりしていたが、昨日は、関節が痛くて、なんていう理由で断ったため、そろそろ断り文句の限界を感じているところではある。
一度拡樹が交流館に来たこともあったが、車に気が付いた恵巳の方が一足先に身を隠して接触を避けていた。2階の自室の窓から見えた拡樹は、肩を落としているように見えた。
何を思っているのか、そんな拡樹の背中を眺めていると、視線を感じたのか、拡樹が足を止めて窓の方を振り返った。
目が合ったような気がした恵巳は、急いでカーテンを閉めた。早まる鼓動を抑えるように、胸に手を当て息を深く吸って吐いた。
その日の夜中、スマホがメッセージの通知を知らせた。画面には、拡樹からの連絡が見えた。
明日の18時。駅前の公園で待っています。
ただそれだけの短い文。
行けません、と恵巳も短く返すと、すぐに返信がきた。
それでも待っています、と。
「なによ…」
放り投げだされたスマホは、静かに画面を暗くした。
温泉旅行から戻ってきて1週間ほどが経っていた。何も知らない拡樹からはいつも通り電話をかけて来たり、ドライブの誘いがあったりしていた。
しかし、どの誘いにも何かと理由をつけて断っていた。最初は仕事を理由にしたり、体調不良を使ったりしていたが、昨日は、関節が痛くて、なんていう理由で断ったため、そろそろ断り文句の限界を感じているところではある。
一度拡樹が交流館に来たこともあったが、車に気が付いた恵巳の方が一足先に身を隠して接触を避けていた。2階の自室の窓から見えた拡樹は、肩を落としているように見えた。
何を思っているのか、そんな拡樹の背中を眺めていると、視線を感じたのか、拡樹が足を止めて窓の方を振り返った。
目が合ったような気がした恵巳は、急いでカーテンを閉めた。早まる鼓動を抑えるように、胸に手を当て息を深く吸って吐いた。
その日の夜中、スマホがメッセージの通知を知らせた。画面には、拡樹からの連絡が見えた。
明日の18時。駅前の公園で待っています。
ただそれだけの短い文。
行けません、と恵巳も短く返すと、すぐに返信がきた。
それでも待っています、と。
「なによ…」
放り投げだされたスマホは、静かに画面を暗くした。