対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
翌日の午後、恵巳はまたもや古書店を訪れていた。

今日も懲りずに古書の入れ替えを行い、ちらりと腕時計に目をやると、とっくに18時を過ぎていた。こうして確認するのは一体何度目だろうか。数え切れないほど頻繁に時計を見ていた。

「何か用事でもあるんじゃないの?うちの手伝いはもうこのくらいでいいから。そこの傘さして帰りな」

店主に言われて窓の外を見る。来た時には晴れていた空も、今では暗い雲が覆って、強い雨を降らせていた。コンクリートの上にはいくつもの水たまりができている。

薄暗くなった道を傘をさしながら帰ることにした。さらに強まっていく雨は、周りの音を遮断するように傘を打ち付けていく。

「はーあ。明日はもう古書店には行けないかなー」

手伝いと言ってもこれ以上通い詰めるのは無理がある。
かと言って、拡樹と会うつもりもなかった。

どんな顔をして会っていいのかわからないというのもあった。
それに、会ってしまうと問い詰めたくなる。問い詰めて、真実を知ったら立ち直れる気がしなかった。
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