対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「そういうことだったんですか…。こちらこそ、疑ってごめんなさい。
ちゃんと、話してくれてありがとうございました。ここ何日か、ずっとこのことを考えてばっかりだったけど、ようやく眠れそうです」

拡樹を見上げて、ようやくホッとできた。

「そう笑顔で言われると複雑です。ずっと僕のことを考えていてほしいのに。
抱きしめてもいですか?」

答えを聞く前に、腕を広げて迫ってくる拡樹。恵巳は、一歩、足を前に踏み出し、その大きな腕に、すっぽりと包まれた。

「今、恵巳さんから来てくれました…?」

「さぁ、どうでしょう」

「好きです。僕のことを好きになってくれませんか?」

斜め上から近づいてくる。思わず、ぼーっと吸い込まれそうになる。が、寸でのところで待ったをかけた。

人差し指で唇を抑える

「何するんですか?」

「それはこっちのセリフです」

「恵巳さん。往生際が悪いですよ」

少し距離ができると、いじけたように口を尖らす拡樹。そんな可愛らしい表情に、つい於保江んでしまう恵巳。

ようやく誤解も解け、2人の仲も戻ったようであった。
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