対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「俺が言いたいのは、婚約破棄に追いやる手段なんか、選ばなければいくらでもあんだろってこと。他に好きな男がいるとか言えば、案外あっさり身を引くんじゃねーの?」

嘘はつきたくないと、反論しようとしたが思いとどまった。ここで言い返したら、どうにかして婚約を破棄させないようにしているように思われそうだったからだ。

「蓮君。そんなこと言って、うちの娘が一生独身だったらどうしてくれるんだ?君が責任とって貰ってくれるのか?この暴力娘を!」

「お父さん!」

結局、恵巳の悩みは何一つ解決しないまま、むしろ混迷を深めた状態で家族会議はお開きとなった。
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