対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
「まだってなんですか」

そんな話をしていると、店の中からぞろぞろと人が出てきた。先ほどまで潰れていた同級生たちは、すぐにそのぼやけた目で拡樹を捉えた。

「あ!あー!もしかして恵巳の彼氏!?」

「げ…、志保…」

ある意味で蓮よりも厄介な絡み方をしてきそうな酔っ払い、志保が、介抱してくれていた友人を突き飛ばしてこちらに向かってくる。

「来ちゃったよ…。まずいな。

拡樹さん、行きましょう。ここは危険です!」

急いで拡樹を運転席に詰め込み、自らも助手席に乗り込んだ。

「おい、まだ話は終わってねーぞ!」

「めぐみー!今度男紹介してよねー!」

窓の外から聞こえてくるそんな叫びは、車のエンジン音とともに小さくなっていった。
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