対立相手が婚約者。それって何かの冗談ですか?
静かすぎる車内にいよいよ耐え切れなくなった恵巳は、勇気を振り絞ってついに拡樹に話しかけた。
「怒ってるんですか?」
怒っているようには見えなかったが、その可能性をまず消したくて、あえて聞いてみることにした。まだ信号は変わらない。ようやく拡樹がハンドルから手を放し、恵巳の方を見た。
「僕は、タイプではないんですね」
どうやら、先ほどの蓮が言っていたことを気にしていたらしい。明らかにからかいの一言だったが、拡樹にとっては大事なことだったようだ。
「あんなの、やまやんが適当に言ったことですよ」
「では、僕は恵巳さんのタイプに入りますか?」
「…」
言葉を詰まらせた後に、入りますと適当に答えていればよかったと息をついた。それができなかったのは、正直に答えなければ何を言われるかわからない空気感が立ち込めているから。
いつもマイペースで、何を考えているのかわからない拡樹だが、意外と鋭いところがあることを、拡樹と何度も会っている恵巳は気づいていた。だから、つい本音を出してしまったのだ。
答えを聞いた拡樹は、青に変わった信号を見て強くアクセルを踏んだ。
「このまま帰す気はありません。
あの場では強がりましたが、僕の知らない恵巳さんのことを彼が知っているのは、正直羨ましい。嫉妬します」
「嫉妬、ですか?」
思いもよらない言葉と、垣間見えた余裕のない拡樹の姿に、動揺してゆっくりと背を離した。息を吸うほどに、鼓動が早くなるのを感じた。
「怒ってるんですか?」
怒っているようには見えなかったが、その可能性をまず消したくて、あえて聞いてみることにした。まだ信号は変わらない。ようやく拡樹がハンドルから手を放し、恵巳の方を見た。
「僕は、タイプではないんですね」
どうやら、先ほどの蓮が言っていたことを気にしていたらしい。明らかにからかいの一言だったが、拡樹にとっては大事なことだったようだ。
「あんなの、やまやんが適当に言ったことですよ」
「では、僕は恵巳さんのタイプに入りますか?」
「…」
言葉を詰まらせた後に、入りますと適当に答えていればよかったと息をついた。それができなかったのは、正直に答えなければ何を言われるかわからない空気感が立ち込めているから。
いつもマイペースで、何を考えているのかわからない拡樹だが、意外と鋭いところがあることを、拡樹と何度も会っている恵巳は気づいていた。だから、つい本音を出してしまったのだ。
答えを聞いた拡樹は、青に変わった信号を見て強くアクセルを踏んだ。
「このまま帰す気はありません。
あの場では強がりましたが、僕の知らない恵巳さんのことを彼が知っているのは、正直羨ましい。嫉妬します」
「嫉妬、ですか?」
思いもよらない言葉と、垣間見えた余裕のない拡樹の姿に、動揺してゆっくりと背を離した。息を吸うほどに、鼓動が早くなるのを感じた。