最高の片思い
「あの、私に合う化粧品下さい」

3年前の夏、ボーナスを下した10万円を財布に入れて、
私はこの星資堂に駆け込んだ。

その時対応してくれたのは店長で、
副社長に恋をして、少しでも綺麗に見られたいと、素直に話をしていた。

店長は、じっくり話を聞いてくれて、
ベースの化粧品から、メイクまで、きちんと教えてくれた。

特にメイクの仕方はスーツの色に合わせて3種類程、
念入りに教えてもらった。

結局2時間以上カウンターで話し込み、
いろんな化粧品をいろいろ買わされると覚悟していたのだが、
店長は最低限の化粧品だけ用意してくれた。

「いきなり全部は無理よ、少しつづ広げていきましょう」

かなり付き合わせてしまった自覚のある私は、
もう少し買うと言ったのだが、

「長くお付き合いできる方が大切なの」

と無理はさせなかった。

適切なアドバイスと、確かなメイクの腕に、
この店長を本当に頼りにしていた。
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