拾ったワンコが王子を連れて来た
まだ、時間があると言う稀一郎さんとベットで1ラウンドを済ませ、その後、お風呂に入りそこでも半ば強制的にもう1ラウンド。
合わせて2ラウンドを終え、疲れ切ってる私をダイニングの椅子に座らせると、稀一郎さんは夕飯の支度へと入った。
「真美、鯛の味噌漬け、俺が漬けたのと親父が漬けたのとどっちが良い?」
帰りがけ、私が美味しいと言った鯛の味噌漬けをお義父さんがお土産にと持たせてくれたのだ。
私は迷わず、お義父さんのが食べたいと言うと、稀一郎さんからは少し寂しそうな声で、分かったと聞こえて来た。
ごめん…
だってお義父さんが美味しいだもん。
プロに勝とうと思う方が間違ってるよ?
まぁ後で慰めとこ。
暫くして、ゼネラルマネージャーがワンコロを送って来てくれた。
お礼にとゼネラルマネージャーを、夕食に誘い上がって貰う事にしたのだ。
「ほんとに良いの?」
「どうぞどうぞ。ついでにつくった大したものじゃありませんから?」
ついでも何も、私が作ったわけで無く、全て稀一郎さんが作って用意してくれたものだ。
「ついで…?」
「あっ…いや…えっと…お、お礼です!
とてもお礼にはなりませんけど、食べて行って貰えたらと思いまして…ゼネラルマネージャーの口に合うかわかりませんけど、ほら食事は大勢の方が楽しいですし…」
私達が食べるついでに少し多めに作ったのは間違いないし、まあ、私が作ったわけでは無いが、それでも、大勢で食べる方が美味しいのは確かな事だ。
ゼネラルマネージャーは、何も応えずポケットから携帯電話を出し、何やら確認してした。
「あっ、何かご予定ありました?
それなら、無理に誘っては…」
「いや…予定と言うほどの事は…」
「柊真に仕事以外の予定なんて、ありゃしないさ! さっさと上がれよ? 飯が冷める」
ワンコロを預かり、送って来てくれた事に対してお礼を言うどころか、失礼極まりない言葉を向ける稀一郎さんを私は叱責する。
「稀一郎さん!なんて事を言うんですか?
ゼネラルマネージャーにだって、デートとか色々あるに決まってるじゃない!
ゼネラルマネージャーが、どれだけ人気あるか知らないの?
立場とか除いても、稀一郎さんと同じくらい人気あるんですよ?
寧ろ、稀一郎さんより絶対人気あると、思うよ!
私だって、初めて屋上でお会いした時…」
SAKURAホテルへ異動して、初めて出勤したあの日、勝手に屋上へは出られないと分かっていても、無性に星が見たくて、私は屋上へと向かった。
そこで見た、ゼネラルマネージャーの背中に、私は言葉を失った。
そこに人が居たと言う驚きより、夜空に佇む姿は素敵で…私は息をのんだ。
「ん? 真美…もしかして…」
「え?」
「柊真、お前やっぱり帰れ!」