拾ったワンコが王子を連れて来た
その後は、ゼネラルマネージャーが、稀一郎さんをからかっただけだと分かり、稀一郎さんは少し拗ねはしたが、三人で楽しく食事する事が出来た。
「この鯛の味噌漬け、いつ食べても美味い」
「ゼネラルマネージャーも、鯛の味噌漬けお好きですか?」
「ああ、稀一郎の親父さんのは絶品だからな」
「ですよね?私も好きです!
お義父さんの漬けたのは絶品ですよね?
ゼネラルマネージャーも以前にも食べた事が?」
「真美さん、そのゼネラルマネージャーって呼ぶのプライベートではやめてくれるかな?
気が休まらないから」
先程のやり取りは、ゼネラルマネージャーの悪い冗談ではあったが、名前で呼んで欲しいと言うのは本当の気持ちらしく、プライベートでは友人として接して欲しいと頼まれた。
ゼネラルマネージャーと友人か…
凄く光栄だけど…
「すいません…
友人としてって言って貰えて、凄く光栄なんですけど…
癖になってると言うか、なかなか男性を下の名前で呼ぶ事が無くて…気恥ずかしいといいますか…
稀一郎さんの時も時間が掛かって、随分苛められましたから…」
「ベットで?」とゼネラルマネージャーがニヤりと笑ったのを見て、私は要らない墓穴を掘ったと知って恥ずかしくなった。
「じゃ、桜花崎さんで良いですか?」
「まぁ真美さんからしたら、それが限界かな?」とゼネラルマネージャーは笑う。
そんな桜花崎さんに「ところで、彼女は元気にしてるのか?」と、稀一郎さんは聞いた。
彼女…?
まぁ、ゼネラルマネージャーに女の人の一人や二人いてもおかしく無いわけで、でも、元気にしてるのかと言う稀一郎さんの言葉も気になる。
「らしいよ?」
らしい?
えっ会ってないの?
付き合ってる彼女は居たけど、別れたって事?
それとも、今は会えない?
「あの…桜花崎さんの彼女さんって…」
付き合いの短い、私ごときが聞いたら失礼かと思いながらも、どうしても聞きたくなって聞いてしまった。
「柊真の相手は、今スイスに行ってるんだ」と、教えてくれたのは、稀一郎さんだった。
スイス?
そう言えば…前に、ゼネラルマネージャーは社員に手を出したとか、稀一郎さんが話していた事がある。
え? って事は…もしかして…
「深田恭子さん?」
頭に浮かんだ名前を何も考えず言葉すると、ゼネラルマネージャーと稀一郎さん、二人は凄く驚いた顔をした。