拾ったワンコが王子を連れて来た
まだ、何も言われて無いけど…
言われてない今だから
自分から離れるべき?
彼に辛い思いさせない為に
自ら身を引いた方が良い?
離れたく無い。
初めて知った愛を…
手放したく無い。
初めて愛した彼を…
「真美? 僕の気持ちは変わらないよ?」
変わらない…?
誰に対しての気持ち?
「ごめん…ホントに疲れてるの…
今日は自分の部屋で寝て」
「…わかった」
稀一郎さんは、「おやすみ」と私の頭にキスを落とすと、部屋を出ていった。
稀一郎さんには、今でも一階の和室を使って貰ってる。
一緒に寝る時は、稀一郎さんが私の部屋に来て、私のベットで一緒に寝る。
シングルベットに二人は窮屈だから、ベットの買い替えや、部屋のリノベーションも考えて居たけど、こうなると、部屋は別で良かったかもしれない。
リノベーションしてから、一人になったりしたら、それこそ辛くなる。
広くなった寝室に、広いベットに一人で寝るのは…
眠れない夜を一人で過ごし、白白と夜が明け始める中、いつもより早くワンコロの散歩へと出かけた。
家に帰ると、既に稀一郎さんは起きていた。
「お帰り」
「え! あ、ただいま…」
いつもより早いから、まだ寝てると思ってたけど、既に起きて朝食の用意までしてくれていた。
「いつもより早くでかけたんだね?」
「…うん。早く目が覚めたから…」
「今日、異動の発表が出るから、今夜は勤務終わりに本社へ寄るから帰り遅くなるけど、真美大丈夫か?」
あー、昨日桜花崎さんが言ってた辞令か…
稀一郎さんが、桜花崎さんの秘書になるって…
稀一郎さんが秘書になる事は、彼がSAKURAホテルへ就職した時から決まっていた事で、私との事が有って少し早くはなったけど、予定通りらしい。
「あ、うん。 大丈夫。
ワンコロも居るし、私も少しやりたい事あるから」
「やりたい事って?」
「うん。前々から思ってた事が有って、良い機会だから…あっ!今日は早く出勤するんだった。
ごめん!先に行く」
用意してくれた食事も取らず、慌てる様にして家を出た。