拾ったワンコが王子を連れて来た

私、何してるんだろう…
せっかく作ってくれた食事も食べないで…
でも、あのまま一緒に居たら、稀一郎さんから昨日の続きを聞かされそうで、怖かった。
余命宣告は嫌だ。

彼を傷つけない為にも、自分から離れた方が…
そう頭で想っていても、やっぱり嫌だ。
自ら彼を手離すなんて…
私には出来ない。

二人で選んだマリッジリング、互いに嵌めあい、命ある限り、絶対にはずさないと二人で約束した、左手薬指の大切な証、離したく無い。

「真美おはよう!お姑さんどうだった?」

稀一郎さんの実家へ行く事を知っていた、さっちゃんは、結果が知りたかったのか、始業時間前に私を探してやって来た。

「え?」

「生田さんの実家行ったんでしょ?」

「あ、うん…」

「元気ないじゃん!
なに、早速嫁いびりってやつに合って来たの?
世の中、嫁と姑は別の生き物なんだから、上手く行くわけないんだって!
気にすることないって!」

「あ、ううん。
お義母さんもお義父さんも良い人で、凄く良くしてくれた…」

「じゃ、なに?
真美が元気無いって事は、生田マネージャー絡みでしょ?」

「実は…ううん。何でもない」

いくらさっちゃんでも、稀一郎さんが深田さんにプロポーズしてたなんて言えない。

「なに?
言いかけて止められると、かえって気になるじゃん!」

「凄い旅館でビックリしたって話!
でも、ご両親もお姉さんも良い人で、楽しいちょっとした旅行になった。
お土産あるから、帰りに渡すね?」

これが最初で、最後の旅行になるのかな…




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