拾ったワンコが王子を連れて来た

飼ってくれって、この人はなに言ってるの?
バカなの?

「実は…アパートを追い出されて…行くとこなくてさ?」

「追い出されたって、どういう事ですか?」

生田さんは友達とルームシェアしていたが、その友達の彼女が押しかけて来て、自分は行き場が無くなったと言う。

「いや、だったら、自分でアパート借りたら良いじゃないですか?」

お給料だって、私達より十分貰ってるだろうし?
時間に不規則な仕事をしてるのに、ルームシェアしてる事自体、私には考えられない。

「保証人とかの問題もあるし…両親は二人とも居ないし、兄も弟も居ないから…」

え?
生田さんってご家族いらっしゃらないんだ…?
知らなかった…
そっか…私と同じなんだ…?

「だったら、会社の寮に入ったらどうですか?」

「それも、考えたんだけど…俺の立場で寮に入ると、他の者が緊張すると思うんだよね?
仕事離れても、上司に監視されてるみたいだろ?」

確かに、気が休まらないかもしれない…

「でも…私も一人暮らしですし…
万が一、生田さんがウチに住んでる事が会社の皆んなにバレたりしたら…
やっぱりマズイと思うので…ごめんなさい…他を当たってください」

「そんな事言わないで頼むよ?」

その時、何故か拾った来た犬が、私を見つめて
“ クゥ~ン ” と鳴いた。

そして生田さんも
「クゥ~ン 僕も飼って?」と悲しそうな瞳で訴えたのだ。

な、なんなのこの人…

俺って言ったり、僕って言ったり…
今度は捨て犬のマネ?
良い歳してなんなのこの人?
もう、信じられない!
でも、外は雨だし…
今から他を当たるのは無理だろうし…

「今夜は、仕方ないので泊めてあげます! でも…」

「有難う! 恩にきるよ!
ワンコロ良かったな?
俺達、飼ってくれるってさ!」

ちっ違う!
今夜一晩だけって…

「ちょ、ちょっと…」

飼うなんて…ワンちゃんの事は飼うって言ったけど、生田さんの事は…
まぁ仕方ないか…?
アパート借りるにも、すぐには無理みたいだし…

「暫くの間ですからね!」

「ワンコロ、男同士仲良くしような?
こらこら、舐めるな、止めろって? アハハそんなに舐めるなよ!」

生田さんとワンちゃんは気があうみたいで、二人(生田さんと犬)は、とても喜んでいた。





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