拾ったワンコが王子を連れて来た

初めて入るペットショップは、ドックフードだけじゃなく、ワンちゃんの洋服やリボンやサングラスなどの寝身飾品まである。

サングラスって…犬も紫外線に弱いの?
えっ! 靴も有るけど…犬って靴履くものなの…?
なんか…私の知ってる世界が…

私の頭の中では、ワンちゃん達が洋服やサングラスを着けて、ステージ上を歩きポーズを取ってる姿が浮かんでる。
まるで、犬のファッションショーだ。

私、頭おかしくなりそう…

「いらっしゃいませ! 何かお探しですか?」
キラキラ笑顔の若い男性店員さんが声を掛けてくれた。

「あの…ドックフードが欲しいんですけど…
種類が多すぎて、どれが良いのか…」

「犬種は?」

犬種…?
「えっと…毛があって…白い犬なんですけど?」

あ!?
私、馬鹿?
いい大人がどんな説明してるの?
自分で言ってても全然解んないわ!

「白い犬…ですか?」と少し困った顔をする店員さんに、私は謝り両手を広げて、大きさを店員の男の子に伝えた。

「あ、すいません…犬種は分からなくて…大きさはこの位で…」

「多分、中型犬ですね?」

店員の男の子は、写真の入ってるクリアファイルを持って来てくれて、見せてくれた。

「この中に、似た子いますか?」

「あ! この犬(こ) このコです!」

「じゃ、サモエドですね?」

「サモエド…? ですか?」

「サモエドの原産地はロシアのシベリアで、典型的なスピッツ系の体型をしている事から、シベリアン・スピッツとも呼ばれてるんですよ?
元々はカモシカ狩りや、そり引きなどに従事していて、人と共に屋内で眠ることもあったそうで、湯たんぽ代わりとしても用いられていたそうです」

「湯たんぽ…?」

「ええ。暖かそうでしょ?」と店員さんは笑った。

「確かに暖かそうですね?」

「だからか、とても人懐っこい犬種なんですよ」

「そうなんですね?
そう言われたら、初めから人懐っこい感じでした。
今朝も起こしに来てくれて、とても可愛い犬(こ)です」

その後は、ドックフードを紹介して貰って、食後の歯磨き用にと、ガムや歯磨きセットも買う事になった。

「あ、散歩用のリードも欲しいんですけど?」

「はっきりとした大きさが分から無いけど、多分これで良いと思いますよ?
調節も出来ますし?」

「じゃ、それを頂きます。
それから、もし、サモエドを探してる飼い主の方がいらしたら、連絡して頂けますか?
大切にお預かりしてますから」

あの犬(こ)が捨てられたんじゃなくて、ただの迷子だったら、飼い主が探してるかもしれない。そう思った私は、ペットショップの方に連絡先を教えた。

「なにか判りましたら、宜しくお願いします」




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