拾ったワンコが王子を連れて来た
結婚っていう契約は、ほんの僅かな亀裂が入っただけでも、砂のお城の様に脆く、いつ崩れ落ちるかわからない弱々しい契約。
だからこそ、愛しあってる者同士がするものであってほしい。
いつか亀裂が入り、崩れ落ちてしまうお城であっても、それでも結婚は私利私欲の為にするものではない。そして、誰かの犠牲の上に成り立つものであってはならない。
「話は分かりました。
少し待ってて貰えますか?
律子さんにお見せしたいものがありますので?」
席を離れ様とすると、生田さんは不安そうに私の名前を呼んだ。
「…真美…?」
私は微笑んで待ってて下さいと言って、二階の自分の部屋へと向かった。
私は一本の電話を済まし、机の引き出しから一枚の用紙を取り出すと、署名捺印をして二人の元へ戻った。
「お待たせしました。
実は私達、これから役所にこれを提出に行くところだったんです。
申し訳有りませんが、お帰り頂けますか?」
そう言って、私はテーブルの上に、署名捺印済みの婚姻届の用紙を置いた。
「ちょ、ちょっとなにこれ?」
「見ての通り、婚姻届の用紙ですけど?」
(バン!)
律子さんは、認めないと言ってテーブルを叩き、婚姻届の用紙を破ろうとした。
彼女にとって、既に署名捺印済みの婚姻届を出して来たことは、余程屈辱だったのだろう。