拾ったワンコが王子を連れて来た
ホフマン・一族って、どこの誰?
どっかで聞いた事…ある気もするけど…?
「しかし、律子さんの事は困った事になったと思ったけど、お陰で真美がサインしてくれて、ホント良かったよ?
人生万事塞翁が馬、俺の座右の銘そのものだ」
「え?
人生万事塞翁が馬…って…幸せだと思っていたものが、不幸の原因て…意味じゃ?」
「うん。そう言う意味もあるけど、今回俺達の場合でいうなら、禍(わざわい)の種だと思っていたのが、幸運を呼び込んだって意味だろな?
人生、何が起こるか先のことは分からない。
そして、人の一生は、思ったとおりにはいかないっていう意味を持ってる。
だから、現状に甘んじるのではなく、いつでも向上心を持て!
俺は、この人生万事塞翁が馬を、俺の座右の銘として今まで頑張って来た。
真美に対してもな?
絶対真美を諦める事なく、いつか俺の隣に立ってくれることを信じて…」
「生田さん…」
「その、生田さんって言うのも、やめて貰わないとな?」と言って、生田さんは微笑んだ。
「え?」
「今日から、真美も生田になるんだよ?
じゃ、このまま役所へ出しに行こうか?」と、生田さんは嬉しそうに言うと、ジャケットを着て、婚姻届の用紙をジャケットの内ポケットへとしまった。
「ちょっちょっと待って!
これは、律子さんを黙らせる策であって、ホントに結婚するなんて、私言って…ない…よ…
取り敢えずこれは…まだ保留って事で…?」
婚姻届の用紙を奪おうとすると、生田さんは「窃盗罪だよ?」と言ってニヤッと笑う。
「えーだってこれは、私のモノじゃない?」と言うと、生田さんは僕のモノでもあると言って、私の唇を奪った。
んっ…
私のファーストキス…
熱くて、頭の芯まで痺れる様なキス。
息を止めていたせいか苦しくなり、意識が飛びそうになった時、やっと彼は唇を離してくれた。
そして、生田さんは「真美酒クセェー!」と言った。
えっ!
彼の言葉に、慌てて口を覆ったが、時既に遅しで、彼は微笑むと愛してると言って、もう一度濃厚なキスを私へ贈ってくれた。
その後、生田さんの用意してくれた、ちょっと遅めの朝食を二人で食べ、まだ頭痛のする私は、少し横にならせてもらった。