乙女心と秋の空
「付き合っちゃえばいいのに」


真顔でそう言うのは友達のミオ
幹也と同じで幼稚園、小中一緒


「タイプじゃない」

「付き合ったら変わるかもしんないじゃん」

「ない」

「即答とか。幹也君、かわいそー」


珍しく用事があるとかで
先に帰った幹也の代わりに
久しぶりにタイミングのあったミオと一緒に帰る


上履きからローファーに履き替えながら
ミオを振り返る


「これでも悩んでるんだよ?一応
断っても幹也はずっと傍にいるし」

「でもさ、幹也君
かさねが本当に嫌だって言うなら
聞いてくれると思うけど。
昔からそうだったじゃん
かさねが本気で嫌だと思うことしなかったでしょ」

「…それは…」



それは…
…その通りだ



本当に嫌だと思った時


言わなくても
距離を保ってくれたし
言葉も控えてくれた


今と変わらず一緒にいることが多かった

小学生、中学生の頃

冷やかしや悪口
好奇の目で周りからみられた時も

全部幹也が引き受けて守ってくれた


今も、多分そうだ

あれだけ毎日好き好き言ってきて

それでもクラスメイトから苦笑や生あたたかい目で見られる程度で済んでるのは
幹也の懐柔技の賜物だろう


周りを嫌な空気にさせない
反感を受けないような態度や雰囲気をつくる


幹也は昔からそういう能力に長けていた
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