乙女心と秋の空
「…おいしい」

「良かったね」


帰り道、大好きなからあげ屋さんに寄って
新作のからあげを購入

近くのベンチに座って、さっそく食べた


さくっとした食感

噛んだ瞬間の肉汁がすごい


柔らかくて、味もしっかりついていて
とにかくおいしい


表情が自然と緩む
そんな私を見て幹也が嬉しそうに笑う






「…ねぇ、幹也」

「ん?」

「幹也はさ、振り向いてくれるまで待ってるって言ったけど
私が、幹也を恋愛対象として見ることはないと思う」


ミオと話してから
思ったこと

幹也との関係性をはっきりさせるべきだと


今のままでずっと一緒にはいられない

毎日
朝や帰り
休み時間の度に幹也と会って話して

でも、幼馴染としての関係でそれはおかしいと思う

恋人なら分かる
けど、私は幹也の恋人にはなれない


「これからはただの幼馴染として
その距離を保って欲しい」

「…かさねちゃんは、俺が嫌い?」

「嫌いじゃない
恋愛対象じゃないだけ」

「そっか。
うん、分かった」

「…」

「なーに?その顔」

「…いや。あっさりすぎてびっくりした」


不思議そうに首を傾げる幹也に
私は目を丸くしたまま返す

だって、今まであれだけ言っても
好きだからと引かなかった幹也が
こうもすんなり頷いてくれるとは思わなかった


「今のかさねちゃん
結構困ってるでしょ
だから、頷いたんだよ」

「………困ってる…」


ミオに言われてから
確かにその感情が大きくなってはいた

どうするべきかってずっと悩んでた


「今までも、困らせてはいたんだろうけど
今みたいに本当に悩んでる感じではなかったから、それに甘えてたけど」
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