今世こそは君を守るから、だから俺の傍にいて
それにしても、結婚、か。
俺には、先程言ったように前世の記憶がある。そしてその前世には勿論、俺の想い人がいた。その時の記憶の方が強くて、結婚など出来そうにない。ちゃんと、その人を愛せるのかが自信が無い。
今まで俺と同じように転生してきた人に会ったことは無いからなんとも言えないけれど、前世の俺の想い人__姫さんがこの時代に転生してきてることだって有り得るのではないか、と無謀な考えを持ってしまう。
車の窓から外を見れば、景色は田舎に近かったところから都会へと出ていた。高層ビルが沢山建っている。
もう、街まで来たのか……。
程なくして、車が停められた。
「こちらです、ご案内します。」
黒いスーツをピシッと着こなした、白髪の男性。きっと相手の家の執事の人。
ああ、俺は本当にお見合いをするのか。変な話だ、高校生なのに。少しドキドキしている。
姫さんに、会いたい。会いたかった。
「樹詩……」
「大丈夫だよ、父さん。」
スっ、と息を吸って、短く吐く。
緊張はしてるけどこの前の柔道の決勝戦よりはマシ……じゃない。ドキドキだ。バクバクだ!
でも行くしかないのだから。
笑顔を浮かべながら、立派な扉をくぐった。