私を繋ぐ優しい手錠
プロローグ
「ねぇ、来栖さん。俺と付き合ってみない?」
びしょ濡れのまま彼は、神代 律くんはそう呟いた。
「え、」
混乱する私は直ぐに答えを出せない。だって、まだ神代くんのことを何も知らない。
「いいよ、嫌なら断っても。だけど、好きになってもらうまで諦めない」
瞳が、私を写してる。
その中に軽蔑も、哀れみも何も無い。
純粋に嬉しいと思った。こんな私をまだ瞳に写してくれる人がいるという事実が。
「別に、いいよ」
差し出された冷たい手の平に、濡れた手を重ねる。どちらのもとても冷えている。
「もうこんなことしないって約束してね」
そんな約束を取りつけて。
君の手は手錠よりも優しく、そして強く私をここに繋ぎとめたようだった。
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