私を繋ぐ優しい手錠

返された携帯は既に通話は切られていた。
「帰るとこないの?」
「…聞いてたの」
「聞こえちゃってただけ」
だから不可抗力、と少し微笑む。
帰るところがないのは困る。
実際、今まで家から出されるということは無かった。親に頼るのだけはしたくない。事実を話したところで私の言うことを信じるとは思えないから。

「俺の部屋で良ければくる?あ、もちろん、俺は別室で寝るけど」
「ありがとう。でも、変なこと噂されるからそういうやめた方がいいよ。特に私だと」
立ち去ろうするが、手を掴まれる。
あの日よりも、随分と温かい手。



「いいよ、別に。言わせておけばいいんじゃん」



真っ直ぐな瞳で、私を見つめる。


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