私を繋ぐ優しい手錠

「手伝ってくれたら、お礼の意味が無いよ」
「いいよ、来栖さんに全部任せるのも悪いし…」
「気にしなくていいのに。1人で料理なんて慣れてるから」

神代くんは私の隣に立って野菜を切っている。
お礼だと言ったのに彼は自分も手伝うと言って勉強を中断した。

「それにしても来栖さんの得意料理が肉じゃがだったなんてね」
ふふっ、と声を漏らすかのように笑う。
「何? …肉じゃがは祖父母が好きだから」
そう。特におばあちゃんは私の肉じゃがを好んで食べてくれた。
祖父母は優しくて好き。
最近はなかなか会えていないけど、たまに電話すると喜んでくれる。
「久々に、会いたいなぁ」






「じゃあさ、明日来栖さんの祖父母に会いに行こうよ」
「明日学校でしょ」
「休めばいいよ。別に顔見るくらいでも味方がいるって思えれば楽になるんじゃない?」
「鞄も財布も学校だし、荷物は全部家よ」
「…家に取りに行く?」
「鍵締められてるよ、きっとね」
何も考えずに発言していたのか。


でも、まぁ。

「ありがとう、神代くん。そこまで気をつかってくれて」

久しぶりにここまで気遣ってもらえた気がする。
彼は優しいからいつも。気遣ってくれてるかもしれないけれど
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