一筆恋々
【四月二十六日 手鞠より駒子への手紙】
八束さまの恋文を拝読いたしましたが、八束さまのすてきなところをきれいに切り取り、面妖なあて布をしたような仕上がりになっていました。
あれでは姉に大切なことが伝わらないような気がしてなりません。
どうか駒子さんが代筆なさり、一字一句変えることなく書き写していただいてもらえませんか?
その旨、同封のお手紙にて八束さまにもお伝えしておりますので、お渡しくださいませ。
何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
かしこまりかしこまり失礼いたします。
大正九年四月二十六日
春日井 手鞠
国語の成績優秀な駒子さま