プリンセスは甘い甘い夢を見る
20分程で着く街へ
アイリスと手を繋ぎ歌を歌いながら歩いていく
「アイリスね、リアーナの歌大好き!」
「私もアイリスと歌うのが大好きよ」
歌いながら歩けばこの長い道のりもとても短いものに感じられる
着いた街の市場は沢山の人で賑わっている
アイリスとはぐれないように強く手を繋ぎ
叔母様から頼まれたチーズとハムを買った
突然アイリスと繋いでいた手が引かれる
立ち止まったアイリスの目線の先には
可愛らしいリボンが飾ってある雑貨屋さんがあった
「アイリス‥リボン欲しいの?」
アイリスは少し俯く
「ううん、いいの!
リアーナ早くお家に帰ろう!」
無理して笑う6歳のアイリスに強く胸を打たれる
「ねぇ、アイリス?
私もう少しお買い物がしたいわ
付き合ってくれるかしら??」
「うん?いいよ!」
純粋な彼女はなんの疑いもなく私に手を引かれついてくる
私が立ち寄った場所はアイリスが眺めていた雑貨屋
お揃いのリボンを4つ買い
そのうちの2つは袋に入れてもらう
手に持った2つのリボン
それをアイリスと自分の髪につけた
「アイリス、今日はお手伝いありがとう」
そう言って店の鏡の前にアイリスを立たせると
彼女の目はいつにも増して輝いた
「リアーナ!これアイリスが貰っていいの?!」
「もちろん!私とお揃いよ!」
叔母様に自分の洋服を買ってくるように言われ預かったお金だった
そんなに物欲もないし今の生活に不自由はしてない
お金はそのまま返そうとも思ったが
何か形に残るもの
それをアイリスに残してあげたかった
「ねぇ?リアーナ?
残りの2つは誰にあげるの?」
終始笑顔のアイリスをみて
自分の選択は間違っていなかったと実感する
「さぁー、誰かなー?当ててみて?」
「え?‥パパとママ!!」
「ん〜叔父様はリボンはつけないかな?」
「じゃぁ‥‥」
アイリスとの話に夢中になりすぎて前を見ていなかった私はマントを着た男性にぶつかってしまった
「申し訳ない、ちょっと余所見をしていて‥‥」
横に倒れてしまった私に手を差し出す男性は
まるで驚いたかのように
その青い瞳で私の顔を凝視した
「いえ、私も前を見ていませんでしたので!
申し訳ございません」
男性の手は取らずに1人で立ち上がる
そうすれば今度はアイリスの方に向き直した
「お嬢ちゃんも大丈夫?」
「アイリスは大丈夫だよ!」
「そうか‥アイリスちゃんって言うのか
ごめんな痛かったろ?」
「ううん、おじちゃんこそ大丈夫?」
「おじ‥はは‥参ったな」
頭を抱えて苦笑いする男性は
もう一度アイリスに話しかけた
「お姉ちゃんとお揃いのリボンかな?」
「うん!リアーナに買ってもらったの!」
「とても似合っているよ
ではリアーナさん申し訳なかった」
「いえ‥こちらこそ!では、失礼します」
一礼した後
男性に手を振るアイリスと手を繋ぎ
家に向かって歩き出した
「見つけた‥」
男性が呟いた一言はもう私たちの耳には届かなかった