プリンセスは甘い甘い夢を見る


家に入ると何やら話し声が聞こえる


「‥‥ですからこうやってお願いに参りました」


そこに居たのは叔父様と話をする
昨日の青い瞳の男性だった


「リアーナ‥‥戻ったか」


「はい、ただ今戻りました‥どうされたのですか?」

その重々しい雰囲気に少し胸がざわつく


「リアーナさん、申し遅れました
私はクラーフベリー国王の家臣ガゼルと申します
この度はここにいらっしゃるエディス家の皆様にお願いがあって参りました」


ガゼルと名乗るその男性は真剣な目で私を見つめる


「リアーナ=エディスです
どの様なご用件でしょうか?」


臆する事なくガゼルと向かい合う
一触即発と言った所だろうか
こんな街はずれの家に訪ねてくるものなど多くはない
ましてや馬車にマント‥
どこかの貴族にしか出来ない





「‥私から話そう」


少しの沈黙を破ったのは叔父様だった


「リアーナは街から見える宮殿を知っているか?」


「ええ、もちろんです」


「あの宮殿には国王陛下、そして王女様がいらっしゃる
この国は王子に恵まれなくてな‥
王女様が後に女王となりこの国を治めてくれることになっている」


「存じ上げております」


私がそう頷くとガゼルもまた叔父様の話に頷いている


「その王女様‥‥アリア王女が姿を消した」


一国の王女が姿を消したことが国民に知れ渡れば
国中は混乱するに違いない
だけどそれがこの家となんの関係があるのか‥
首を傾げる私の顔を見て叔父様は悲しそうに微笑む

「似てるんだよ‥
リアーナ‥‥お前がアリア王女に」


「え?‥何を仰っているのか‥」



「リアーナさん、これを」


ガゼルから渡された一枚の写真
それはまるで自分自身の写真を見せられたかの様な錯覚に陥るものだった


「‥‥これは?」


「アリア王女です」


「え‥?そんな冗談‥‥」


私は王女を見たことはない
ただ顔を伏せる叔母様と
頭を抱える叔父様の様子を見れば
それが冗談ではないと言うことがわかる


「率直に申し上げます
リアーナさん、私と一緒に宮殿に来てください
この国を‥そしてこの国の民達のためにも
貴女が必要なのです」


「それは‥私に王女様の身代わりになれと言う事ですか?」


「さすが察しがよろしいようだ」


「断る‥‥と言ったらどうなります?」


「私にはお答えすることはできません
‥‥ただ、今陛下は大変殺気立っていらっしゃいます。とだけお伝えしておきましょうか‥」


薄ら笑いで答えるガゼルの
脅迫にも似たその言葉に身震いがする
私が望むこの家の平穏な生活が
わたし自身の答えによって左右されてしまう
もう答えは1つしかなかった


「‥‥分かりました」


「リアーナ!!」


私の腕を強くて掴む叔母様の手
その手にそっと片方の手を乗せる


「ただ‥2つのお願いがあります
それを了承していただければ宮殿へ参ります」


「その願いとは?」



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