エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

裏路地から大通りに出ると、駅に向かうひとの波に入り込む。
『ひとりになりたい』なんて言いながら、歩いて一分でこれだ。その矛盾に呆れて笑みがこぼれた。

ついでに言えば『一生許さない』なんて、おおげさすぎた。こどもの喧嘩みたいだ。
私に一生許されなかったところで、芝浦だってそんなに困らないだろうし……恥ずかしいことを言ってしまった。

「……まぁ、いいや。どうでも」

小さく呟き、ひとりため息を落とす。
むわっとした湿気を含んだ空気が沈んだ気持ちをより重たくするようだった。

駅へと急ぐビジネスマンにうしろからぶつかられよろける。転びはしなかったものの、ぶつかっておいて舌打ちまでされ、普通ならイラっとしたところだろうけれど、今はそんな気も起きなかった。

すべてが〝まぁ、いいや。どうでも〟で片付いてしまう。

そういえば……と今頃になって、今日は結構疲れているんだったと気づく。
マンゴー味のミルクフラッペを買う予定だったけれど、道を引き返す気にもなれず、諦めてそのまま駅へと足を進めた。

せめてコンビニでなにかしらご褒美を買って帰ろうかな。
一生懸命頑張ったのに部長には叱られちゃうし、結構、今日は報われなかったし、なにかリッチなスイーツでも……と考えても、気分は沈んだまま一向に浮き上がってこない。

しまいには、ご褒美なんかどうでもいいか……とさえ思ってしまう。

< 101 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop