エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「白坂くんがくれたんです。『俺はこういうの飲まないからよかったら桜井さんとでも使ってください』って」
なんとか頑張りぬいた金曜日、帰ろうとしていたところを沼田さんに声をかけられた。
沼田さんとは、同じ部署で仕事をして一年以上経つけれど、会社帰りに誘われるなんて数回しかない。
だから珍しいなと思いついて行くと、そこは、ミルクフラッペマンゴー味でお世話になったコーヒーショップだった。
『好きなの選んでください。これあるんで』
そう言った沼田さんが見せたのは、このショップのギフトカード。とりあえず商品を受け取り席についたところで聞くと、沼田さんは白坂くんにもらったと答えた。
十九時の店内は八割がたの席が埋まっている。
窓際のカウンター席。左隣に座っている沼田さんに「白坂くんが?」と聞く。
「はい。たぶん、白坂くんは本当は先輩にあげたかったんだと思いますよ。でも、それだと受け取ってもらえないって考えて私に渡したんだと思いますよ」
沼田さんが注文したのも私が注文したのも、ミルクフラッペマンゴー味だ。
もはや曰くつきになってしまったものの、せっかくの季節限定で店員さんもおすすめしてくれたため、これにした。
「白坂くん、少し気にしてたんじゃないですかね。吉田さんの件で、私と先輩が色々我慢したことを。だからフォローのつもりで今回これをくれたのかなって考えてます」
「でも、白坂くんのせいじゃないのに……」
「気を利かせてくれたんですよ。まぁ、単に落ち込んでる先輩見てるのが嫌だったのかもしれないですけど。……あ、おいしいですね、これ」
緑色のストローに口をつけた沼田さんが驚いたように言う。
私も同じようにひと口飲み「本当だね」とは言ったものの、内心、しまったと思っていた。