エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
私がここ数日落ち込んだ顔をしてしまっていたのなら、その理由は芝浦だ。
熊田様の一件じゃない。
でも、芝浦とのことを知らない白坂くんや沼田さんからしたら、熊田様との一件で落ち込んでいるように見えたんだろう。
同じ日だったしな……と考えながら透明なプラスチックのコップをテーブルに置く。
「悪いことしちゃったな……。ギフトカード、白坂くん、わざわざ買ったのかな?」
「一応、もらったとは言ってましたけど実際のところはどうですかね。でも、甘えておけばいいんじゃないですか? 先輩冥利につきるじゃないですか」
「んー……そうだね」
とりあえず、厚意はありがたく受け取って、あとでなにかしらお返ししようと決めストローをくわえた。
店内はエアコンが効いているけれど、コップの表面にはもう汗がぽつぽつと浮かんでいた。
テーブルを汚さないようにと、紙ナプキンをコップの下に敷く。
BGMとして流れているのは、男性シンガーが歌い上げるバラードだった。最近、よく耳にする。
「白坂くんって、今年二十三ですよね。で、先輩は今年二十六でしたよね」
「え? ああ、うん」
突然、年齢の話になって不思議に思っていると、沼田さんは私をじっと見て「年下は論外なんですか?」と聞いた。
年下は論外……?と少し考えてから、彼女の言いたいことがわかり呆れて笑う。
「三つも離れてたら、白坂くんのほうが私のこと論外でしょ」
前、匂わせぶりなことを言っていた気もするけれど、どこまで本気かわからないし、と片付ける。
そもそも白坂くんは年下な上、社長の甥っていう立場がある子だ。たまたま同じ部署に配属されて指導係になんかなったから親しく話せているだけで、本当だったら話すことすらないくらい遠い立場の……。
「恋愛に、歳の差も立場の差もないと思いますけどね」
ずばり言われ、ぐっと言葉に詰まる。