エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「ずっと身近にいたひとを、好きだって気づいたんだけどね。こう……振られてようやく気付いたって感じで。可能性ないのにポロッと好きだとか言っちゃうし、相手は悪くないのに八つ当たりみたいなこと言っちゃうしで……今、形勢を建て直すのに精いっぱいなの」
コップに浮かんだ汗をなぞるように指先で触れる。
冷たさがじわじわと指先から伝染してくるのが気持ちいい。
「だからね、この数日落ち込んで見えたなら、それが原因なの。ごめんね、変な気を遣わせちゃって。白坂くんにもお礼言っておくから」
笑顔を作って顔を上げると、沼田さんはそんな私をじっと見て眉を寄せた。
「それって、芝浦さんのことですよね?」
「……え?」
「え、振られたんですか? 芝浦さんが先輩を振ったってことですか?」
「えっ……え?」
矢継ぎ早に質問されて、パニックになる。
だってそもそも、どうして相手が芝浦だってバレたんだろう。そこからわからない。
ヒントもなにも出していないのに、沼田さんは相手が芝浦だって信じて疑っていないし……どういうこと?
「え、なんで……?」
戸惑いをそのまま声にすると、沼田さんはさも当たり前みたいな口調で言う。
「なんでって……ああ、相手が芝浦さんだってことがなんでわかったかってことですか? そんなのわかりますよ。給湯室でふたりで話してるところ何度か見てますし」
「それだけで?!」
「私そういうの鋭いですから。それに芝浦さんって案外わかりやすく先輩のこと特別扱いしてるじゃないですか。会社前のフリースペースで芝浦さんがひとりで待ってるところも何度も見てますし。あれって先輩を待ってるんでしょ?」
確信した顔で聞かれ「……うん」とだけ答える。
沼田さんは緑色のストローを指でいじりながら続ける。