エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「最初は付き合ってるのかなって思ったんです。周りが面倒そうだから隠してるだけかもって。でも先輩をいじってみても全然引っ掛からなかったから、違うんだなって。ほら、先輩ってそういうの隠すの下手じゃないですか」
「……わかんないけど」
「下手なんですよ。だから先輩の態度を見て、ああ、芝浦さんの片想いなんだなって思ってたんです。先輩、贅沢な身分だなって」
「贅沢な身分って……まぁ、沼田さんの推理が当たってればそうだったかもしれないけど」
ストローを持って、中をくるくるかき混ぜながら「実際は違ったわけだし」と言うと、沼田さんは勢いよく「それなんですよね」と反応した。
「私が見てきた感じだと、芝浦さんが、なにも気づいていなかった先輩に振られるならまだわかるんですけど、その逆はありえないと思うんですけどね。……っていうか先輩、芝浦さんのこと好きだったんですね」
ニヤッとした顔で言われる。
もう、この恐ろしく勘が鋭い沼田さん相手に隠し事は無駄な気がして、目を逸らしつつも「うん」とうなずいた。
火曜日、芝浦をお店に置いて帰ってから、たくさん考えた。
私はいつから芝浦のことが好きだったんだろうってことも考えた。
『芝浦さんって、桜井さんのことが好きなんじゃないですか?』
『芝浦さんは別次元にいる男じゃないですよ。桜井さんときちんと同じ地面を並んで歩いてる。そこに恋愛感情が生まれたってなにもおかしくない』
私はきっと、白坂くんにああ言われる前から本当は、心の奥では、望んでいたのかもしれない。
自分から駆け寄って告げるのは怖いから、芝浦が歩み寄って言ってくれるのを待っていたのかもしれない。