エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
週明け、明るい気持ちでスタートを切ろう!
そう決意を新たに強引に上げたモチベーションは、閉店間際に現れた小金井さんの笑顔でダダ下がる結果となった。
『お盆休みに入る前に顔だしておこうと思ってねぇ』なんて言っていたけれど、誰も頼んでいないし、その程度で来るのは本当にやめてほしい。業務妨害だ。
二年前に結婚した元アイドルが離婚し活動再開というニュースに対してああだこうだと一時間も話せる小金井さんは今日も絶好調のようだった。
終始笑顔で対応しながら、今日も残業か……とため息をつきたくなったのは言うまでもない。
「まぁ、女の子はいいよねぇ。男次第でやり直しがきくんだからさ。男なんて可哀相なもんだよ。いいように振り回されて挙句、悪者扱い。セクハラだパワハラだ言うけど、世の中って結局女の子優位にできてる部分も多いよ。桜井さん、自分がいかに楽させてもらってるってわかってる?」
いつもだったらもっとサラッと流せるはずの言葉が、いちいち癪に障るのは私の精神状態のせいだろうか。
せっかく切り替えて真っ白だった気持ちが、ズブズブと黒い水に浸されていくようだ。どんどん余裕がなくなっていく。そのスピードがいつもよりも速い。
結局、会社に戻ったのは十八時。〝手が空いていたから〟と、私や白坂くんのぶんの書類仕事も半分ほど終わらせておいてくれた沼田さんには、今度おいしいスイーツでもおごろうと決めた。
白坂くんはなにやら仕事のことで部長と話していたため、今日は洗い物は私がすることにして、給湯室に向かう。
給湯室シスターズ含め、誰もいないことにホッとしつつ、使ったカップを洗っていく。