エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
単純作業は、手元にさえ集中していればいいから気持ちを落ち着かせるには最適だった。
同じ理由で、土日は料理や洗濯ものばかりして過ごした。
なにを作ろう、とスーパーについてから考えたとき、いつか芝浦がおいしいと褒めてくれた大学芋を思い出し、さつまいもを手に取ってしまった。
自分でも未練がましいとは思ったけれど、そもそも大学芋は作り置きしてしまうくらい、私の好物だ。作ってなにが悪い。
そう割り切り、考え事を排除するためにひたすら大学芋制作にとりかかっていたせいで、私の部屋の冷蔵庫には大学芋が詰まったタッパーが五つほどできあがってしまった。
心配になって〝大学芋、日持ち、手作り〟でググったところ、二日から五日だという。間をとって三日と考えても明日までだ。作ってからは食事はずっと大学芋で済ませているけど、まだ半分は残っているし……どうしよう。
沼田さんや白坂くんに食べてもらうにしても、ちょっと日がたちすぎているし食べてもらうほどの腕でもないし……と考えながらカップを洗っていると「あ、桜井さん」と話しかけられる。
見ると、横沢さんと渡辺さんがそろって入り口のあたりに立っていた。
揃って登場か……と、うんざりしているのを隠すため、わずかに笑顔を作り「お疲れ様です」と挨拶する。
このひとたち、ここにたまっていることを上から注意されたって話だったはずだ。未だに直してないのか、と内心驚いた。
会社で仕事以外の部分を注意されるって恥ずかしいことなのに、なにも思わなかったのだろうか。
横沢さんにいたっては、前回私に〝使えない〟みたいな失礼な発言をしていたけれど、そんなことなかったような笑顔で話しかけてくる。
「ねぇ、桜井さん。白坂くんの新情報、なにかないの?」
「……さぁ。仕事以外の話はしないのでわかりません」