エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「なんか毎月必ず店頭に来るおやじがいるらしいじゃん。今日も来たらしいって部署内で噂になってたんだけど、それ相手してるのって桜井さんなんでしょ? できてんの? 毎月ってどう考えても異常じゃん」
振り返ると、横沢さんが勝ち誇ったような笑みを浮かべて私を見ていた。
「違いますけど」
「まぁ、なんとでも言えるよね。内見なんかふたりきりだろうし、サボってたってナニしてたって証拠がないもんねぇ?」
「だから違うって言ってるじゃないですか」という私の声なんて聞こえないみたいに言われる。
「いいよね。おやじの相手するだけで給料がもらえて。でもここ、キャバクラじゃないんだけど。その辺、勘違いしてない?」
「さっき偉そうに上から目線で言ってたけど、自分のほうがどうなの? 公私混同しすぎじゃない? おやじと楽しく適当に会話して給料もらってるとか図々しすぎるって思わないの?」
トレイを持つ手に、ギュッと力がこもった。
苛立ちを悲しみが上回り、目の奥がじわっと熱くなる。
どうして頑張って仕事をしているだけなのに、こんなことを言われなくちゃならないのかがわからない。
こんなの今時学生だってしないような、低俗な嫌がらせだ。
私は間違っていないし、だったら絶対に屈服しない。同じレベルになりたくないのなら、笑って去るのがいいのだろう。
そう思ったから笑おうとしたのに……意思とは反して唇が震える。こんなひとたちの前で泣いたりしたくないのに、湧きたつ悔しさが止められない。
ぎりぎりと奥歯をかみしめて必死に耐える。