エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

ふと、そういえば……と思い出す。
こんなふうに感情が溢れて泣きそうになるのは、一年前のあの時以来だ。

あの時は、芝浦がずっと傍にいてくれた。いつもの軽口が嘘みたいに、ずっと優しく頭を撫でて慰めてくれていた。

後日、絶対にからかわれると思ったのに、何日経っても芝浦はそれを口にしなかった。代わりに、それまでより少し優しくなったのを覚えている。

それを思い出し……トレイを持ったままの両手をギュッと握りしめた。

私はやっぱり嫌だ。
あの手が、他の子の頭を優しく撫でるのも……芝浦が、他の誰かを好きになるのも。
誰かの隣で相槌を打って、受け入れて励ますのも……全部嫌だ。

全部全部、嫌だ。

「やだぁ、なに? 泣く感じ? やめてよ、私たちがいじめてるみたい……」
「――桜井さんをいじめるのはやめてくれますか」

突然後ろから聞こえてきた声に驚く。
私が振り向くよりも先に隣に並んだ白坂くんは、私が持っていたトレイを受け取る。

それからゆっくりと視線を横沢さんたちに向けた。
その横顔はいつも通り無表情なのに、なぜか少し怖く思えた。

「あなたたちが言う〝おやじ〟の内見は、俺も同席しています。時事のニュースに絡めてセクハラまがいの嫌味を延々と言われるんです。正直、女性にはツラい内容だと思うので、おじにはそう伝えるつもりでしたが、そこまで言うならあなたたちを推薦しておきますよ。楽な仕事だというなら、どうぞご自身で体験してみてください」

淡々と言う白坂くんに、横沢さんたちは言葉も出ないようだった。きっと、どこまで聞かれていたのかがわからず、下手になにも言い出せないんだろう。

私も驚きのあまり声が出なかった。涙も引っ込んでいた。


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