エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
……そういえば。
芝浦が待ち伏せするようになったのは、芝浦の前で泣いてしまったあとからだったかもしれない。食事に誘って仕事の愚痴を聞きだすようになったのも……。
そうか……。芝浦は私がいっぱいいっぱいになって泣き出さないように、息抜きさせようとしてくれていたんだ。
だから、自分だって忙しいくせに待ち伏せなんかして、あんなぶっきらぼうな誘い方して、私の弱音を聞いて……。
ひとの愚痴や弱音なんて面白くなんかなかったはずだ。自分の仕事だけで手いっぱいだったはずだ。それなのに……全部、私のために。
知らずに受けていた優しさと思いやりが、今更胸のなかで主張して、涙を浮かべさせる。
芝浦が私とふたりで食事に行くのはなんでだろう。
そう疑問に思いながらも軽く考えていた自分が情けなかった。
芝浦は、一年間もずっと私を気遣い続けてくれていたのに。
浮かんだ涙が目尻から流れ落ちる。
スンと鳴き声を漏らした私に気づいた芝浦は、親指で涙を拭ってくれる。
優しい微笑みを受け、余計に涙が溢れそうだ。
「だから、時間がかかっても俺を好きになってくれるように持っていこうと思ってたのに、酔った勢いで告白するし……白坂が、あんなこと言い出すから待ってられなくなった」
白坂くんの名前が出てきて、色々なことが繋がる。
ああ、そうか。芝浦は白坂くんを気にしていたんだ。
「だから、最近おかしかったんだ」
「気持ちを少しずつ見せていけば、桜井も俺を意識するようになるかと思った。桜井は情も深いから全部利用してこっちを向かせようって。うっかり気持ち全部見せて怖がらせないようにとか、色々考えて我慢してたのにあんな勢いで告白するとか……本当、自分のガキっぽさが嫌になる」
私を押し倒した体勢のまま、芝浦がポスッと私の鎖骨のあたりにおでこをくっつける。
落ち込んでいる姿が可愛くて、自然と手が伸びていた。
芝浦の頭を撫でながら目を閉じる。
私は、この人が好きだ。