エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
結局、作りすぎた大学芋は大半を芝浦が消費してくれた。
シャワーを浴びたあと、芝浦は約束通り私を部屋に送り届けてくれた。その車中お腹が減ったと話していたので大学芋の存在を伝えてみると、芝浦が『食ってっていい?』と言うから流れで。
本当は、芝浦の部屋にも泊まりたかったし、私の部屋にそのまま泊まってくれてもよかった。
でもそれは翌日が休日だったらの話だ。
週の頭である月曜日の夜にできることじゃない。
お互い社会人になって四年目となれば、平日の夜にそこまでの無茶をするわけにはいかないことはわかっている。
着替えだってないし、翌朝一度家に帰るのは大変すぎる。
それでも、別れ際のキスのあと、『じゃあね』と言うまでに微妙な間が生まれてしまったけれど。
一日の仕事を終え、部署のメンバーに挨拶をしてから急いで着替え走って社外に出た。そして少し周りを見回したところで目当ての後ろ姿を見つけ、声をかける。
「白坂くん!」
時間は十九時半。
昨日とは違い、空をどす黒い雲が覆ってはいなかった。わずかに混ざるオレンジ色は空の端に残っているだけで、もう姿を消そうとしている。
真上には三日月が浮かんでいた。
呼び止められた白坂くんは、私を見ると不思議そうな顔をしていた。
「なにか残した仕事がありましたか?」
「ううん、そうじゃなくて……」
焦りのあまり大声で呼び止めてしまったことを反省する。
ここは会社前のフリースペースだし、社員が通りかかってもおかしくない場所だ。
だったら、こんな危険な場所で話さなくてもいいのだろうけれど、呼び止めてしまった手前、わざわざ仕切り直すのも悪い。
キョロキョロと周りを見回し、知っている顔がないことだけ確認した。
往来の真ん中での立ち話はさすがにどうかと思い、「ちょっと、こっち」と白坂くんの腕を引っ張り端によけたところで切り出す。
ここなら会社の出入り口からは死角になるし、目立たないはずだ。