エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「昔から変わってるって言われるんですけど、俺は好きな子が幸せそうにしてたらそれで満足なんですよ。その相手が俺じゃなくても、笑っててくれたらそれでいいなって感じです」
「……そうなんだ」
白坂くんの言い分だと、独占欲だとかそういった欲は皆無ということになる。
好きなひとが違うひとの隣で笑っている姿を見て、私だったらただ満足するなんてできない。きっと、そこに嫉妬も混じる。
でも、白坂くんの表情からは嘘は見つけられず、また彼の性格を知っているだけにそういう考え方もあるのかな、とどこか納得していると。
「だから、桜井さんが幸せそうにしている限りは横からかっさらったりしないので、安心してください。芝浦さん」
白坂くんが、私の後ろを見て言った。
その視線の先を追って私も振り向くと、私の後方数メートルのところに芝浦が立っていて驚く。
いつからいたんだろう。
まったく気づかなかった。
同じように他に聞き耳を立てている社員がいるんじゃないかと不安になりキョロキョロしていると、白坂くんが言う。
「こういうのって普通は盗み聞きするものじゃないんですか? まさか堂々と聞かれるとは思ってもみませんでした」
「俺が視界に入っていれば下手なこと言えないだろ。だから」
私の隣に立った芝浦が答えると、白坂くんは納得いかなそうにわずかに眉を寄せた。
「俺相手にそんな牽制しなくても……芝浦さんって、それだけの見た目してて仕事だってできるのに、新入社員の俺なんかが気になるんですか?」
謙遜ではなく、本心からの疑問みたいだった。
白坂くんこそ『俺なんか』とは周りにいる誰も思っていないだろうけれど……と考えていると、芝浦が小さく息を落とした。