エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「当たり前だろ。社長の甥なんてカード、俺の持ち札じゃどうにもならないんだから」
「それはただ単に生まれ持った付属品ですよ。……でも、そのおかげで芝浦さんが俺を対等に見てくれるなら悪くはないですね」

ふっとわずかに微笑んだ白坂くんに、芝浦は眉を寄せ告げる。

「いくら社長の甥だろうが御曹司だろうが、本人になんの魅力もなかったら俺だってこんなに焦らない。言い方が悪かったなら謝る」

目を逸らさずに言った芝浦に、白坂くんは驚いたように目を見開き……それから笑った。

「いえ。必要ないです。ありがとうございます」


白坂くんと別れ、駅までの大通りを芝浦とふたり並んで歩く。
夜色に染まった空には星がいくつか見えていた。

視線を空から地上に下ろすと、対向車線を走る車のヘッドライトをまぶしく感じた。

「夕飯、食べていくだろ。なにがいい?」

こうして芝浦とふたりで帰るときは、今まではたいてい外食してきた。
もちろん、そこに不満はないのだけど……「んー」と少し考えてから芝浦を見上げる。

「今日は家でなにか作ろうと思ってたんだけど……芝浦が嫌じゃなかったら、うちに寄ってく?」

毎週火曜日は、最寄りスーパーの特売日だ。
帰宅時間によるけれど、早く帰れた日には材料を買って作り置きを二、三種類作るのが今のアパートに住み始めてからの習慣だった。

無理してまで自炊するのは自分の首を絞めるだけだから、時間があってなおかつ気が向いたときだけと決めている。
今日は両方がそろったから、帰宅時間が見えたころからそのつもりだった。


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