エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「やめてよ」
「やだ。……そこまで赤くなるほど照れることか?」
傍から見ても真っ赤だったんだろう。
不思議そうに顔を覗きこんできた芝浦を睨むように見て、唇を尖らせた。
「だって、芝浦に名前で呼ばれたの、昨日の、一度だけだから……そのときのこと思い出しちゃって困る……」
繋がれていない方の手で、芝浦から顔が見えないように隠しながらもごもご言う。
そもそも昨日の今日で顔を合わせてしまった時点で私は恥ずかしかった。
でも、芝浦は普通だし私だけ意識するのもおかしいから頑張って平静を装っていたのに、これじゃあ台無しだ。
繋がれた手から伝わってくる体温も、肩が触れ合うほどの距離感も、私を呼ぶ甘い声も。
全部を意識してしまい、胸がトクトクと反応し高鳴っていた。
「いいから、離して……」
言い終わる前に、グンと手を引かれる。
それは芝浦が歩く速度を上げたからで、驚きながらも引きずられるように足を進めていると、芝浦が前を向いたままで言う。
「俺だって困る」
「え?」
見れば、半歩前を歩く芝浦の耳が赤くなっている気がした。
「外でそんな顔されたって、手を繋ぐ以上のことなんかできないだろ」
『そんな顔』がどんな顔なのかわからない。
でもきっと、芝浦から見てもそういう……意識した顔だったんだろう。
それがわかり一気に恥ずかしさが増す。
羞恥のあまりなにも言えなくなった私を顔半分だけ振り向いた芝浦がじっと見る。