エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「……は? 今、なんて言いました?」
考える前に声が出ていた。
職場でもめるのは面倒だから適当に流して要領よく立ち振る舞ってはいるけれど、もともと喧嘩を売られて黙っているタイプではない。
仕事の面で言われるならまだしも、そんなくだらないことを断った程度で『使えない』なんて言われたくはない。
だから手を止めじっと見ると、横沢さんはにこりと笑顔を浮かべ「えー、なにも?」と言い背中を向け出ていく。
その様子を眺め……ムカムカとした感情を強引についたため息で逃がした。
どうして仕事をする会社で、仕事以外のことで悩まなくちゃならないんだろう。
白坂くんがもう少し周りに対して柔らかい対応ができればなぁ……と考え、もうひとつ息をつき、洗ったカップを拭いていく。
本店営業部には水道がない。
だから、朝、給湯室でお湯をつくり、それを入れたステンレスポットをふたつ持っていく。お客様が来店された際には、緑茶かコーヒーを出し、一日の最後に使ったカップをまとめて給湯室に持ってきて洗うのがなんとなくの決まりだ。
ここ最近は白坂くんがこの作業をしてくれていたけれど、彼からは特に〝給湯室にいると話しかけられてうっとうしい〟といった文句は聞いていない。
理由は簡単だ。しつこくして彼に嫌われたくないから。
私には嫌われてもどうでもいいから執拗に聞いてくるんだろうな……とうんざりしながらカップを拭いていると、「お疲れ」と話しかけられる。
全然気づかなかっただけに驚いて見ると、Yシャツ姿の芝浦がそこに立っていて胸をなでおろした。