エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「私、コーヒーの味って嫌いじゃないけど違いとかよくわからないし、正直、みんながブラック飲むから私もそうしてたんだ。だけど、芝浦に微糖のコーヒーもらって飲んでみたら、私も微糖のほうが好きだなって思うようになって。でも、たしかに種類の少ない自販機では微糖ってなかったりするから困るよね」
私よりも前から微糖派の芝浦はさぞかし不満に思っているはずだ。三階の自販機に置いていないせいで、わざわざ二階に下りてきてるわけだし。
だから〝本当にそうなんだよ。全自販機微糖入れるべきだろ〟くらいの返事を予想していたんだけど……。
返ってきたのは「……ん」という、かすかな声だけだった。
不思議に思い視線を向けると、芝浦は壁に寄り掛かったまま目を伏せている。不機嫌そうにも見える横顔が気になり、拭き途中だったカップを置いてから芝浦に近づいた。
「もしかして怒らせた?」
コーヒーの味をよくわかってもいない、ただちょっと微糖がおいしいなってくらいの私がなにを言ってるんだとか思われただろうか。
本気ファンがにわかファンに感じるような怒りでも買ってしまっただろうか。
芝浦はそんな心の狭い男ではないと思うけれど地雷は人それぞれだしな……と思いながら聞くと、私にチラッと視線を向けた芝浦はそっぽを向いてから答える。
なんとなく、そわそわしているように見えた。