エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

『すみません。俺、今日使ったカップだとかを洗うの忘れたことを今思い出して。明日少し早めに出社して済ませるので、そのまま放っておいてくれて大丈夫ですから』

「ああ、洗い物ならやっておいたよ」
『あー……そうなんですね。すみませんでした。無駄な時間使わせちゃって』

「ううん。私もたまたま気づいたから済ませただけだし。それに、もう会社も出られてるから全然。だから、明日もいつも通りの時間で大丈夫だから」

給湯室で芝浦が指摘した通り、本来なら洗い物は新入社員である白坂くんの仕事だ。
けれど、毎日絶対彼がしなければならないわけではない。こうして忘れてしまうことだってあるし、私や沼田さんの手が空くこともある。
その場合は誰がやったっていい仕事だ。

それでも、思い出してわざわざ電話を入れてくれたことに感心しつつ「じゃあ、明日ね」と告げると『ありがとうございます。お疲れ様でした』と通話が切られた。

いい子だな、と思う。

「待たせちゃってごめんね」

信号はとっくに青に変わっている。
だから歩き出しながら謝ると、隣に並んだ芝浦は「別に」と答えたあとで「なんの電話?」と聞く。

「カップとか洗うのを忘れちゃったから、明日早く出社して済ませるって電話。ほら、芝浦も言ってたでしょ。給湯室で」

芝浦は「ああ、あれか」と納得したような顔をした。

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