エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
「部長に言われたとき、本当は少し悩んだよ。そもそも私はあの部署のなかで女性社員だけで言えば年長者だけど、全体で考えれば沼田さんの次に若手だし、他に適任はいるんじゃないかと思ったから」
本店営業部にいる男性社員は部長を抜いて四人。みんな私より年上だ。
「でも、部長が私に頼んだってことは他は見込みがないからってことだろうし……悩んでるくらいならやっちゃった方が楽かなって。不安だったり心配だったりする仕事だって、実際やってみたら思っているより簡単かもしれないなって。なんでもないかもしれないって思ったの」
ストップランプが消えたりついたりを繰り返す大通り。
しばらくの沈黙のあとで白坂くんが「実際やってみてどうでした?」と聞くから笑顔を返した。
「まだ道半ばだけど、思ってたとおり……に近いかな」
笑いかけると、白坂くんはそんな私をチラッと見たあと、前を向き「そうですか」とだけ答えた。
その反応が見たことない気がして、もしかしたら照れてるんじゃ……?と横顔を凝視していると、彼が「あー……そうだ」と口を開く。
珍しくわずかに焦りが見えるような顔に思えた。
「先週の夜、電話した時って誰かと一緒でした?」
「あー……うん」
突然の話題変換に、今度焦るのは私の方だった。
「外みたいだったし、話し声も少し聞こえたので。タイミング悪くてすみませんでした」
「ううん。大丈夫」
笑顔で答えたつもりだったけれど、自分でもぎこちない気がした。
そのとき一緒にいたのが原因で芝浦と微妙なことになっただけに、苦笑いみたいになってしまう。
そんな私に気づいたのか、白坂くんはじっと私を見たあとで聞く。