エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない


依田さんというのは、たい焼き屋さんをしているおばあさんだ。
店舗探しときに協力したのがきっかけで、たまにたい焼きを差し入れてくれるようになった。

〝売れ残りそうなときに持ってきてるだけだから〟〝食べてくれたら嬉しい〟と言われたら断れず、ありがたくいただいている。

でも、依田さんだって〝みなさんで召し上がって〟といつも持ってきてくださっているし、わざわざ私に届けてくれなくてもよさそうなものだ。

それに、今までだってたまたま私が休んだ日に持ってきてくださったときはあった。その時は、依田さんが次にいらっしゃったときにお礼を忘れないようにと、部長や沼田さんから後日報告だけ受けていた。

それで十分だと思っていたのに、どうして今日だけわざわざ……。

なにか事情があったのだろうか、と疑問を浮かべてから、芝浦を放っておいてしまっていることに気づく。続いて、自分の部屋着具合にも。

生地がとても薄いTシャツは、中のキャミソールが透けているし、下なんてランニング用の短パンだ。
シャワーを浴びたあと着替えたままの格好は、異性を出迎えていいものとは思えなかった。

とりあえず、首にかけたままだったタオルは外してみたけれど、そんなんじゃお風呂上り感は抜けない。
今から着替えて更に待たせるか、このまま出るか。……まぁ、いいか。大丈夫か。うん。

「ごめん。今開けるから待って」

ためらいを振り切るようにして玄関を開けると、私を確認した芝浦がわずかに目を見開いたのがわかった。


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