エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない
ちょうど一年ほど前、芝浦の前で泣き出してしまったことがあった。
元彼と別れてすぐ、仕事でも同期内でもうまくいかない時期があった。
私や沼田さんに仕事を教えてくれた先輩が他部署に異動になり、急遽私が沼田さんの指導係を引き継ぐことになった。
まだ入社して三年目だ。自分のことでもいっぱいいっぱいなのに後輩をどう指導したらいいのかわからなくて、あの頃は毎日胃が痛かった。
きっと他の同期も勝負時で余裕がなかったんだろう。久しぶりに集まった会で口論になってしまった。
ひとつひとつは些細なことなのに、それがまとまるとどう対処したらいいのかわからなくなってパニックになり……でも、部署内では私が指導係だからしっかり見せないといけなくて。プレッシャーだった。
それが爆発してしまったのが、たまたま芝浦の前だった。
飲み会の帰り道、壊れたように突然ボロボロ泣き出してしまった私を見た芝浦がとても驚いていたっけ。
「あれはたまたまだし。……もう昔のことでしょ。忘れてよ、あんなこと」
たった一度だけだったんだから、と気恥ずかしくなりながら言うと、芝浦はふっと笑みをこぼす。
「無理だろ」
「……やっぱり性格悪いよね」
からかうつもりなんだろうと思い眉を寄せると、芝浦は「そういう意味じゃない」と笑った。