エリート同期は一途な独占欲を抑えきれない

「桜井が料理始めると一気にうるさくなるな」

「仕方ないでしょ。なかなか上達しないんだから」と口を尖らせながら、移動してフライパンを取り出しコンロにかける。

「そもそも、こんな真夏にグラタンなんてリクエストする芝浦が悪い」
「いいだろ。好きなんだから」
「普通のパスタなら、ソースも買ってあるし茹でるだけで簡単だからって言ってるのに……これ、容器に塗ったあと冷蔵庫に戻しておいてもらっていい? 上段の右側」
「ん」

差し出したマーガリンを、芝浦が受け取る。
そして、スクエア型のグラタン皿の内側に薄く塗ったあとで冷蔵庫を開けた。

中を見た芝浦が「なに、このタッパー」と聞くから、マーガリンをフライパンの上で溶かしながら「作り置き」と答える。

「中身なに?」
「今置いてあるのは、大学芋ときんぴらかな。気が向いたときに多めに作ってるの。で、余裕がない日に消化してる。……あ、あと甘夏むいたのも入ってるかも」

「へぇ。どれか食ってもいいの?」
「どれでも食べていいよ。グラタンができたら一緒に出すから、とりあえずはそのまま冷蔵庫に入れておいて。……あ、ついでに牛乳出して」

薄切りにした玉ねぎとベーコンを炒めていく。
冷凍庫から発掘したエビを簡単に水で溶かしてからそこに加えると、水分が音を立てて弾けた。

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